第304章

 通話を切った。通話を切ったはずなのに、前田南は本来あるべき仕事モードへと切り替えられずにいた。

 手元の書類をどれだけ凝視しても、内容が頭に入ってこない。

 募る焦燥感。ラフスケッチの細部について相談しようと、アシスタントを呼ぼうとした矢先――。

 また、携帯が鳴った。

 彼女は相手が望月琛だと決めつけ、画面も見ずに通話ボタンを押した。声には露骨な苛立ちが滲んでいる。

「言ったでしょう、結構よ。あなたは自分の心配だけしていればいいの」

 言い終わるか終わらないかのうちに、受話器の向こうから、どこか面白がるような声が返ってきた。「おやおや、前田社長? 一体どうしました?」

「あ...

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